海外で子どもに日本語をと考えた時、絵本はまず最初に用意する物の一つではないかと思います。
ある時、地域の図書館で、まだ小さかった娘と絵本のコーナーでイタリア語の絵本を見ていたところ、図書館の職員の方が「日本人ですか?ここには、日本のお話の絵本もありますよ」と古そうな絵本を持って来て見せてくださったことがあります。
それは、イタリア語で書かれた浦島太郎のお話の絵本でした。
お話は正確に翻訳されていましたが、挿絵に出てきた浦島太郎さんの姿には、ちょっと違和感がありました。この浦島太郎さんは着物を着て釣り竿と魚籠を持っているのですが、足元が中国の昔話に出てくるような先が尖って上を向いた靴だったのです。
これは、当時の私には絵本を考えて買う契機になりました。
遠い日本の、まして現代とは違う昔話ですから、子どもにとってはフィクションと同じレベルのお話に近いのかもしれませんが、それならそれで完成度の高い絵本を見せてやりたいと思いました。
イタリアで育つ以上、日本の着物や風景を自然に目にすることがないのですから、昔話の絵本はきちんと描かれたものを選んだ方が良いのではないかと思ったのです。
それを念頭に日本の書店で探すと、昔話の絵本には、挿絵も文章もかなり印象が違うものがあることに気付きました。
昔話の再話がどの程度原作に忠実か、着物や髪型、小道具、建物や背景の描き方、そして、おはなしの雰囲気に合った日本的な力強さや美しさまで気を配った絵本は、結構限られていました。
上に挙げたものは、復刻版だったり、ロングセラーの絵本ですが、やはりそうなるだけの理由があると思わせる絵本です。
原典に忠実であるために文章が耳慣れなかったり、お話が少々長かったりはしますが、かわいらしい現代的な色使いの絵本ばかりでなく、古典的な日本の昔話も、ある程度大きくなった子どもには見せてあげてみてください。
日本に限らず昔話の絵本には色々と考えるべきところがありますので、興味を持たれた方はこちらの本も大変参考になる1冊だと思います。
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