2024.11.13 23:00ねずみさんのパンツ有名な「しろくまのパンツ」に続く第二作の絵本です。主人公がねずみなので、本の大きさも小さくなっているのも面白いです。子ども達はしろくまのお話を知っているのですが、それでも皆わくわくして楽しそうに聞いていました。ページをめくる楽しさとこれは誰のパンツかなと当てっこする面白さ、安定のオチで、とても楽しい絵本です。
2023.10.26 22:00絵本「移動するものたち」動物の姿を借りて、難民・移民の人々を描いた「サイレント絵本」文字のない絵本です。今、どんな人もこのような世の中で生きていることから目を背けずに、伝えなければならないものを感じ取れる絵本だと思います。とても鮮やかな綺麗な色使いで、細かいところまで描き込まれた美しい絵ですが、ところどころに象徴的なものが描き込まれていたり、厳しい現実があったり、おとぎの国のファンタジーではない生きることの現実を考えさせてくれます。読み終わって楽しい気持ちになる絵本ではないですが、大人も子どもも読んでほしい絵本です。この絵本を描かなければならない、出版しようと思った人がいることを私たちは忘れてはいけないと思います。イタリアでも出版されていますので、ぜひ手に取ってみてください。
2023.05.05 22:00にほんごをまなぶえほん幼児への読み聞かせとして使うのではなく、教科書やドリルではないものを使って、もう少し気軽に日本語の文法的要素をインプットしたい時に使えるかもという印象を持ちました。外国人向け初級日本語教科書とほぼ同じ内容で、親しみやすいたくさんの絵で子供向けにしたものと考えてください。何度も繰り返し読んであげることで、ある程度のインプットは望めると思いますが、お話として面白い起承転結があるわけではないので、子どもによっては飽きやすい可能性があります。絵本と言うよりは、絵の多い子供向け日本語教科書でしょうか。この絵本を教科書のように使って、絵を見て理解し、口頭で練習をして、ある程度日本語を使えるようになってから、読み書きは別の教材を使うのが良さそうに思いますが、日本在住...
2023.02.15 23:00しかけえほん食べ物を題材にした絵本は、男女を問わず興味を示してくれますし、絵本を見ながらの会話も弾みます。精密なタッチでおいしそうな食べ物やお料理ができるところを描いた絵本も何冊か持っていますが、最近購入したこの絵本も、皆とても興味津々で見てくれました。ページの一部がめくれるようになっている仕掛け絵本で、にんじんの皮をむいたり、トマトを刻んだりといろいろな変化を実際に楽しめます。本物の野菜で皮剥きをしたり、料理をしている様子を側で見せたりするのが一番良いのかもしれませんが、食事の支度の最中には難しいことも多いので、このような絵本は擬似体験でき、とても楽しそうでした。文章もオノマトペが多く、絵を動かしながら臨場感たっぷりに楽しめます。やさい、くだもの、お花、お料理、...
2023.01.04 23:00ノベライズ 1以前に、「鬼滅の刃」のノベライズについて書きましたが、他にも小学生向けのノベライズ本がいろいろありますので、まとめてみました。絵本の読み聞かせから次の段階になると、日本語で読書をする子どもとそうでない子どもにはっきり分かれます。日本語で読むものは、せいぜい国語教科書だけという子も少なくないでしょう。日本語でも読書をしてほしいと思っても、どんな本を選べば良いのか、海外在住で手軽に日本の出版物が手に入らない環境ですと、手に取って確認することや子どもが自分で選ぶこともできませんから、選書はとても悩むところです。日本語で漫画を読んだり、動画を見ることももちろん日本語に触れることになりますが、文章を読むこと、読書をすることはある程度習慣と訓練が必要ですので、一人...
2023.01.04 23:00ノベライズ 2こちらは、集英社みらい文庫のノベライズの一部です。集英社の漫画から映画化、アニメ化されたもののノベライズも多くあり、アニメやマンガ好きな子には親しみやすいですね。ノベライズは漫画よりは文章量が多く、ストーリーを追うだけでなく、文を読む必要がありますので、マンガよりは日本語の文を読むことになり、その過程で色々な語彙や表現に触れることができます。漫画だけではなく本を読んでほしいと、古典や名作のような固い重い内容の本を与えて、結局読み進められないという結果になるよりは、子どもにとって面白そうなノベライズから始めてみるのは、おすすめです。
2022.12.16 23:00「ねこと王さま」絵本の読み聞かせから次の段階に進む時にどのような本を選ぶかは、結構難しいですね。いわゆる児童書と呼ばれるジャンルになるわけですが、いきなり文字がぎっしり並んでいる本を選ぶのではなく、まずは楽しく読めるもの、子供が興味を持ちそうなもの、ふりがなつき、挿絵もある、お話全体が長すぎないなどを基準に選んでいました。文章も、子どもが聞いても読んでも理解しやすいような文体になっていることも案外大事です。小学校中学年からとなっていますが、短いお話に分かれているので、1冊を読み切るのが難しい子でも少しずつ読み進められますし、もう少し小さい子の読み聞かせにも向いています。絵も可愛いくて、お話もユーモアがあり、優しい気持ちにさせてくれる本で、おすすめの一冊です。続編「ねこ...
2022.11.25 23:00「文盲」アゴタ・クリストフずっと読んでみたいと思っていた本をやっと落手し、一気に読んでしまいました。彼女に限らず、母語、母国語ではない言語で小説を書いた人は他にもおられます。例えば、多和田洋子、リービ英夫、温又柔、李琴峰などがパッと思いつく方々ですが、その誰とも違う、もっと強く静かに押し寄せてくるような感情が淡々と書いてある本でした。生活する、生きのびることが過酷な中、そのためにだけ必要な言語で、憎んでさえいる言語で、しかしそれを使って自分の心情を書き留めることをした彼女を思う時、私の日本語をわかる人になってほしいと願った娘への気持ちの発端を思い出したりもしました。彼女の幼い娘に彼女の母語が通じなくなる様子がさらりと書かれている場面もありますが、その淡々とした描写がすごくよく理...
2022.11.20 23:00絵本「こんとごん」教室で子どもたちに読む絵本は、家庭で親が子に読み聞かせするのとは違った視点で選ぶものもあります。家庭での読み聞かせは、夜寝る前や親も子も時間のある時などリラックスした気持ちの時に読むことが多いと思いますが、教室では皆と一緒ですので、ワクワクできるお話や、ゲラゲラ笑える絵本、ちょっと日本語の知識にもヒントになって、自分の学んでいることにつながるような絵本なども便利なことが多いです。また、お化けのお話なども、皆と一緒に聞くとまた違う面白さ、楽しさがあるようです。何年経っても古臭くならない永遠の定番のような名作絵本ばかりではなく、最近出版された絵本もできるだけ選ぶようにしています。子どもたちは今を生きていますので、名作も大切ですが、最新の面白さも一緒に味わう...
2022.09.25 22:00小学館世界J文学館子どもにどんどん日本語の本を読んでもらいたいと思っても、海外ではその本を手にすることがなかなか難しい場合が多いです。日本語の本が豊富にある図書館や文庫などが身近にないと、個人で日本から取り寄せるか、一時帰国の際に運んでくるしかありません。航空便だと送料が結構嵩んだり、届くまで日数がかかったりしますし、トランクに入れるにしても重量制限もありますから、なかなか大変です。電子ブックができてからは、この問題がある程度解決された感がありますが、子ども向けのコンテンツはまだまだ限られていた気がします。この小学館世界J文学館は、1冊買うことで、カード決済や認証なしで125冊の本にアクセスすることができるようになるという新しい仕組みの全集です。買わなければならない1冊...
2022.09.21 22:00ことばをひきだすために新学期が始まり、現地の学校のことだけでなく、お子さんの日本語の発達やこれからの日本語学習についていろいろな不安やプレッシャーなどを感じておられる保護者も少なくないかもしれません。現地の幼稚園や小学校に入り、日に日に現地語優位になってくるのを目の当たりにするという場面は、私にも経験があります。継承語教育の場合、日本語話者の親がたった一人で我が子の日本語に向き合うことになるケースが多く、親の不安やプレッシャーは募りがちです。日本語学習というと、ひらがなの読み書きをスタートと捉える方も多いのですが、子どもの場合は、文字の読み書きよりずっと大切なことがあります。可能な限り日本語の発話、語彙の知識を育てておくことが、後々の日本語学習の土台になるからです。とは言え...