いろいろとツッコミどころのある記事で、ある程度センセーショナルな書き方でもありますので、参考程度にお読みください。
ダブルリミテッドというのは、すでに浸透した言葉だと思いますが、実際はそう簡単に素人が判断できるものではありませんし、言語学の分野では差別的であると指摘する声も多く、使われなくなっている傾向がある呼称です。
実際そういう状態に育ってしまった子が全くいないわけではないでしょうし、バイリンガルであってもある場面では不自由を感じる人がいることも事実だと思いますが、個人の言語能力というのは、これができなければダブルリミテッドなどとパキッと分けられるものではなく、例えれば、色の濃淡のように、とても細かい境界線が曖昧に複雑に影響しあっている濃度のようなもの、複数言語話者であれば、その言語のいろいろな要素が混ざり合ったものです。
この記事がフェアではないと感じるのは、日本国内で日本語だけで教育を受けた人の中にも、日本語運用能力としての読解力、文章力、表現力、漢字や表記法および文法の知識などにおいて、同等でも均質でも完璧でもないケースが普通にあることに触れていない点です。
発達や特性に問題がなく義務教育を終えていても、文章作成が苦手だったり、話す内容が貧弱だったり表現力が乏しかったり、また、有名大学卒の政治家でも、漢字が書けない、読み間違う、語彙の使い方がおかしいなど、結構テレビや新聞などで気づくことがあります。
その人たちを日本語リミテッド、日本社会で使えない人のようには呼ばないでしょう?
海外に移住し企業や大学などで働いている日本人の方も多いと思いますが、その方々であっても、母語である日本語と現地語の能力には差があるはずです。
母語能力と現地語能力、そしてその人の専門知識や技能を活かして、言語的に足りない部分はネイティブには必要ない苦労や努力をし、また誰かに補ってもらったり、必要であれば確認訂正してもらうことで完璧に近づけ、仕事を進めておられるのではないでしょうか。
海外で一時的にでも外国語で教育を受けることで得るものと失うものがあるということを保護者は自覚し、外国に住んだら楽に外国語がペラペラになって日本に帰ってきたらバイリンガルの出来上がり!などという幻想は持たないことは大前提ですが、在住国で高等教育を受けて卒業できるまで勉強できたのであれば、もう片方の言語(例えば日本語)が苦手で、4技能に難しいことがあるというのは、一般的には普通だと思ってよいと思います。
日本人の親から生まれただけで日本語が難なく完璧に習得できるわけではないし、外国に住むだけでその言語を楽して高度なレベルまで習得できるわけでもありません。
もし、日本語と在住国の言葉を両方ともに変なアクセントもなく流暢に話せ、高度な読み書きまでできる人がいたら、それは親も本人も長い時間をかけて人知れず相当な努力をしたということです。
できる範囲で努力をしても、日本語で簡単な会話は問題ないが漢字は全部は読めない、漫画はわかるけれど小説は無理、ゲームは日本語でもできるけど、敬語は使えない、日本語はそんなに問題ないけれどちょっとした日本の常識や習慣などで戸惑う、知らない語彙や表現がある、などいろいろなケースが存在するのは全く普通だと思います。
この記事を読んで、帰国子女は日本語が完璧ではない、ほら!ダブルリミテッド!と脅すかのような書き方は、ぜひ控えていただきたいなと感じました。
気軽に安易な海外移住や留学をするなという警告であれば、もう少し違う書き方があったのではと思います。
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