日本語がカタコトなのは

佐藤ミケーレ倭子さんというYouTuberの動画です。

自分の日本語がカタコトなのは、ブラジル人の父がカタコトの日本語で話しかけたからだということを面白おかしく話しておられます。

真面目に言うと、彼女の日本語はカタコトではないです。

飼い犬や父親について尊敬語で話しているところがありますが、間違いはそのくらいで、語順や語彙量、助詞や接続詞の使い方に、若者言葉のくだけた要素はあっても、日本語初心者のような非文的な間違いはありません。

一部の発音に発音上の違和感が確かにありますが、ポルトガル語の干渉とは考えにくいので、お父さんのせいではなく、滑舌と言うか、鼻音の問題ではないかと思います。

他の動画では、もっと滑らかにシャキシャキ話しておられる回もありますので、ある意味芸風なのかもとも思いました。

日本語しか喋れないのに、その日本語もカタコトで、私は1言語もできないんだよ!0.5言語!というのは、多分自虐的な「ネタ」でしょう。

不自然な日本語の片親との会話のせいで、日本生まれ日本育ちの子供の日本語の発音が不自然になると言うのは、普通ほぼ考えられません。

彼女の場合は、日本語で学校教育を受けていますし、お母さんは日本人ですから、正しい日本語を聞き会話をする環境は十分あったと考えられますし、お父さんの不思議な日本語をずっと聞いて育ったとしても、それに自分の発音や文章構成の知識が影響される可能性は低いです。

イタリアに置き換えて考えても、日本人の片親が、発音のおかしい不完全なイタリア語を使って会話していても、それを聞いて育った子供のイタリア語の発音が非ネイティブ的なものになるケースはまずありません。(私も娘が小さい頃は心配したものですが、あっという間に見事にLとRも難なく発音していました)

海外で生活し、日本人の片親が日本語で話しかけなかったり、話しかけが少なかった場合は、子供の日本語の発音が現地語の干渉を受け、いわゆる外人訛りになるケースはあります。

在住国の言語で生活し、教育を受けると、その言語がやはり一番身につくわけですね。

その点からも、やはり親は自分の母語で話しかけるべきだという理論も多くの方に納得していただけるかと思います。

お父さんがもしポルトガル語で話しかけていたら、彼女は少なくともポルトガル語の日常会話は話せるようになった可能性はあります。読み書きは父娘の会話だけでは難しいので、また別の努力が親にも子にも必要ですが。

第三者が口でそう言うのは簡単ですが、国際結婚や移民家族には色々な状況や事情がありますし、複数言語習得の努力に耐えられる子と嫌で嫌で仕方がない子の差もあります。

また、言語についての考え方も人それぞれ、家庭によりそれぞれですので、良し悪しの話ではなく、結果的に、外見や国籍と第一言語が一致しない人が地球にはいっぱいいることを、そろそろ日本国内の日本人も当然と受け止めるようになってほしいとも思いました。

お父さんの心情はこの動画からは分かりませんが、お父さんにはお父さんの考えがあって、あえて日本語でお嬢さんと接してこられた可能性は高いのです。

また、家の外では悪目立ちしないように外国語で我が子に話しかけないようにするケースも少なくないはずです。英語以外のマイナー言語ならこの傾向は尚更でしょう。

日本でハーフと呼ばれる若い人が活躍するのは良いことだと思いますが、使用言語の自虐ネタでウケを狙える社会は、ちょっと違うかなとも思いました。

こどもの にほんご

nipponica イタリア・ボローニャ 幼児からの継承日本語クラス