これは下の写真の高島俊男さんの著書のタイトルでもあります。
すで絶版になっていて入手しにくいのですが、とても面白いのでお勧めします。
漢字検定に関して、中国文学の専門家としてバッサリと、愚問が多いこのような検定に当時の文部科学省がお墨付きを与えたことについても疑問を投げかけておられます。
漢字検定は今だに有名ですし、継承日本語を勉強している小学生の漢字学習のモチベーションの一つになり得ることは、私も異論ありません。
ただ、漢字の知識だけを増やしても日本語の運用能力全体を測れませんし、伸ばせません。
それに加えて、漢字検定の中身を知れば知るほど、海外でこの検定だけを励みに漢字を勉強しても意味がないのではと感じているのも事実です。
漢字検定は、現在10級から1級まであり、最高の1級は本当に難しい問題ばかりです。
一番難しい級は論外としても、小学校低学年レベルの級でも、本当にこれで漢字を解ったことになるのかしらと思うような設問が多々あり、ずっと疑問を持っています。
日本語を継承語として学ぶ子どもにとって、漢字はただのトリビアになって良いのかと、私は疑問に感じていると言えるかも知れません。
日本国内で日本語で教育を受けている子どもなら、毎日日本語を生活で使い、他の教科も日本語で勉強していますから、漢字にポイントを絞って学ぶこともプラスになることがあるでしょうが、海外在住では、日本語に触れる時間が圧倒的に少なく、漢字習得に四苦八苦しているケースが多いのですから、もし漢字を目標にするなら、もっと日本語全体にも興味を持ち、楽しく進める方法があるのではと感じています。
もちろん、漢字に強い興味を持っていたり、どんどん漢字を覚えたいと思う子どももいますから、そのような子どもの個人的な励みや目標になるのであれば問題ないと思います。
しかし、継承日本語を学ぶ子どもの漢字学習の総仕上げとして漢字検定合格を目標にしても、楽々と合格する実力が既に身についているのであればともかく、なんとか漢字を頑張ってもらうための励みにだけしてもいいのかしらというのが正直な気持ちです。
第三者が認めてくれる、正式な合格証がもらえるなどの機会が他に選択肢としてあまりない以上、それを目的にして利用するのは、考えようによっては仕方ないかなとは思いますが...
この漢字検定協会の創立者は京都の人で、アカデミックな世界とは無縁の方です。
下記参考:
はっきり言って商才に長けているとは言えても、学問的に系統立てた実力の判定効果を考えて、この協会を設立されたのでは全くないと言えるでしょう。
その後の経営母体によるゴタゴタはニュースにもなりましたから、ご存知の方も多いと思います。
事件後、組織的な改革があり、漢字検定そのものはこうして現在も存在しているわけですが、文部科学省が後援から外れたこともそれが理由でしょう。
元々が胡散臭い検定だったのが、商才のある理事長の力で、漢字ブームを呼び起こし、ビジネスモデルとして成功したのであって、漢字そのものを深く理解している人が問題開発や運営をしているわけではないことは、少なくとも保護者や教師は自覚しておく方が良いように思います。
どんな目的にしろ、コツコツ漢字を覚えるのは悪い事でありませんから、全く何の役にも立たないとは思いません。漢字検定に合格したいなと思って毎日の漢字学習に身が入るなら、ありがたいくらいです。
けれども、既に漢字に難儀している継承日本語学習には、メリットがあるとは思えない学習方法になりやすいので、注意が必要だと感じています。
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