漢字の書きをおぼえるには 2

一般的な書き取り練習や漢字ドリル等は、漢字を書く練習と読み方を覚えることを同時に行なっているわけですが、海外で育つ子供にとっては、意味も書き順も記憶に残らなかったり、そもそも書くことが負担だったりと色々な要因から、苦労した努力の結果が実らない場合も多いように思います。

 漢字の書き取り練習が辛いのは、覚えることと書くことを同時に行っているのに、覚えられない書けない結果に終わってしまい、無駄、無理、意味わかんない!という負のイメージを植え付けてしまうことも大きいと思います。

アルファベットは、まず1文字の書き方とその音をおぼえ、それから、単語の綴りと読み方、その意味を覚えていくのに対し、漢字は一度に全ての要素を覚える必要があり、アルファベットに慣れている子どもには、かなり作業のハードルが高くなります。

漢字の練習に無力感を抱いてしまう前に、書く練習と覚えることを別々に行う方法を試してみることも一案です。

盲学校の生徒が漢字を覚えるために工夫された結果の集大成であるミチムラ式 は、理論としてはかなり納得できる方法です。

ここまで完璧に考え抜かれたものでなくても、漢字をいくつかのパーツとして捉え、組み合わせとして覚える方法や、漢字の偏とつくりに注意して似ている漢字を関連づけて覚えるようなことは、自然とやっているのではないでしょうか。

ミチムラ式は、小学校で習う漢字のすべてに唱え方をつけ、タブレットで使えるようにまで工夫されています。もちろん、単語帳のようなカード式もあります。

タブレット式のものは、全学年分を購入すると結構な値段になりますが、本気で漢字に取り組むのであれば、悪い投資ではないと思う教材です。


この方法では、無理やりノートに書く練習をせず、まずは唱えて書き順をおぼえます。

継承語として日本語を学ぶ子どもには、この唱え方の日本語が難しく、あまり使えないという意見もありますが、一年生の最初の漢字から口承で覚えるようにすれば、パーツの名前や意味がわからないということもある程度防げるのではないかと感じています。

漢字を唱えて覚える方法が難しいケースは、概して、年齢相応の日本語の語彙の知識が少ない子どもである可能性が高いので、継承語の場合は、この点がどうしてもネックになるように感じています。

そして、カタカナを完璧に覚えてから漢字の勉強に入ることも大切です。なぜなら、カタカナは漢字のパーツになっているものも多いからです。

日本の小学校では、カタカナにはそれほど時間をかけずに漢字に移っていきますが、それと同じようなスピードでは海外で育つ子どもには少々早すぎます。漢字が始まっても、カタカナも並行して繰り返し復習するような工夫も必要かと思います。

また、部首の名前を覚えていると便利なことも事実です。

「この漢字どう書くんだったっけ?」「しんにょう!」

「あれ?この漢字、のぎへん?ぎょうにんべん?」「ぎょうにんべん!」

と一言答えるだけで、子ども達は「あー。そうだったー」と割と楽に正しい漢字を思い出せます。

漢字は複雑に見えますが、ある程度コツを掴めば覚えることは可能ですので、子ども達が挫けずに少しでも楽しんで勉強できるように願っています。


こどもの にほんご

nipponica イタリア・ボローニャ 幼児からの継承日本語クラス