グロテスク

参議院選挙の結果には色々と思うところはありますが、今回の選挙で特に目立ったのは、「日本人ファースト」に代表される外国人排斥の考えを大なり小なり各政党が打ち出したことでした。

日本国籍の人だけが日本に住んでいるのではなく、在住許可のある労働者は国籍に関係なくそれぞれに応じた税金を納めているはずです。日本国籍の人でも、理由があれば税金を免除されたり、法律違反と知りつつ脱税している人もいるはずです。

犯罪者は国籍に関わらず取り締まるべきなのに、違法外国人と名付けて国外追放と強調するのは、決して良い感じはしません。日本国籍者は国外追放できませんが、取り締まることはできるはずです。裏金議員とか取り締まってますか、本当に?

近視眼的に多くの不満を外国人のせいにし、外国人が優遇されていると言い募る選挙運動は異常だと言えるでしょう。

自民党は参院選に際して、外国人政策の解説を小野田紀美議員にさせています。

ご覧になって分かる通り、この方はアメリカ人と日本人の間に生まれ、1歳で日本へ引っ越して以来、日本で教育を受け育った方です。

数年前、蓮舫さんの二重国籍問題が取り沙汰された時に、厳しく追及していたのもこの方でしたが、ご自分もアメリカ国籍離脱の手続きが完了しておらず二重国籍状態だったことが判明し、その後に戸籍謄本の一部やアメリカ国籍喪失証明書を公表しておられたことはよく覚えています。蓮舫議員にも同じように戸籍謄本を公表しろと責め立てていましたが、この動画と同じく非常にグロテスクでした。

この時からずっと、彼女にはなんと言ったら良いのかわかりませんが、複雑な思いを持って見ています。

自民党が、明らかに日本人ではない親の外見も受け継いでいる小野田紀美議員を何かとこのような問題で表立って使うのはなぜでしょう?

自民党が、人間の多様性を認めて共生を目指しているからとは思えません。

現に自民党の主張は、排他的で国家主義的です。

なぜ、戸籍的にはほぼ同じ状況だった蓮舫議員と小野田議員なのに、片方はスパイであるかのように責められ、片方は勝ち誇ったようにそのことを追求できるのでしょう。

小野田紀美議員には、なんとかして「正しい」日本人になりたい、自分も日本人として認められたいというルサンチマンを感じると言ったら言い過ぎでしょうか。

片方の国には記憶も思い出もないとしても、自分自身が二つの国の両親から生まれたのであれば、自分よりもっと複雑な事情や状況に置かれてしまっている外国人がいることに少しでも思いを寄せることはできないのでしょうか。

日本を日本人が安心して住める国にすると言うのではなく、国籍や出自や外見に関わらず誰もが安心して住める国にすれば済む話なのです。

常に自分より弱い立場、困っている人のことを考え、皆が少しでもより良くなる道を見つける方法は、分断や対立を煽ることではありません。


私が、イタリアで生まれ育つ娘にできれば日本語も習得させたいと考える上で気をつけたのは、単に言葉が喋れるようになるだけではなく、それぞれの国について正しく公平に理解できるようになり、常にニュートラルな視点を持ち、どちらの国にも良い点と悪い点や同じところも違うところもあり、自分の身の回りの知っていることだけが常に正しいわけではないことを早くから自覚させることでした。

この視点を持って、日伊の2国だけでなく世界のどこの国についても、偏見や先入感を持たず歴史を理解し知識を増やして育ってほしいと考えました。

今は、子供たちが日本語を学ぶお手伝いをしていますが、日本語や日本に興味を持ち好きになって欲しいと思いますが、日本を特別視したり、国家と人を同一視しないように、教室内での言動には常に注意しています。

小野田議員が気づく時が来ることを願うばかりです。


こどもの  にほんご

nipponica イタリア・ボローニャ 幼児からの継承日本語クラス