作文を書いてみよう

夏休みの宿題の一つに、楽しかったことを絵に描いてくださいという課題を出しました。

この絵を土台にして、作文を書くところまでやってみようと考えてのことでした。

まだひらがな全部は読み書きできない子から漢字の勉強をしている子までと、年齢も進度も様々な子ども達が一緒に勉強していますので、「夏休みの思い出を作文に書きましょう」という指示だけでは難しく、細かい段階を踏んで進めていくための準備が必要です。

少し大きい子は絵がなくても自分の記憶を言語化できますが、小さい子や語彙が少ない子にとっては、目の前に自分が描いた絵があることで言いたいことの助けになると考えました。


まず、絵を見ながら質問をして、日本語で自由に話してもらいます。

いつ?どこで?だれと?なにをした?どうだった?をポイントに順に質問して、絵から記憶を言葉にする作業をします。

一人で書ける子には質問に答えたことを用紙に書いてもらい、メモを作成します。

まだスラスラひとりで書くのがちょっと大変な子には、質問をしながら私がメモを作成していきました。

次に、このメモを土台に文で話してもらいます。

例えば、「どこに行ったの?」「海」、「誰と行ったの?」「パパとママ」と答えた場合なら、「そうなんだね。パパとママと一緒に海に行ったんだね。」と私がまず言ってみせて、

「うん。パパとママとうみにいった。」と長い発話を引き出します。

そして、話し言葉と書き言葉の違いを実感してもらうために、

「パパとママとうみに行きました だね。ここに書いてみようね。」と提示して、一人で書ける子には用紙に書いてもらい、短文を書いていきます。

その短文を、必要があれば接続詞を使ってまとめ、短い作文の形にしました。

題名、自分の名前、最初は一マス下げる、句読点と表記の決まり事もここで提示します。

また、カタカナを練習している子にはカタカナを使うように、漢字を勉強している子には漢字で書くようにと、勉強したことを実際に使うように意識しました。

このようにして下書きを作ってから、書写ができる子はそれを見ながら清書してもらい、まだ書写が難しい子には単語レベルに区切って読み上げながら薄くなぞり線を書いて見せて、音と文字を関連づけてから、なぞり線の上を丁寧に自分で書いてもらいました。

最後に、自分で書いたものを音読してもらい、完成です。

音読が難しい子には、文字を指差しながら私が読んで目と耳から理解してもらいました。


このようにして、話し言葉が文字になる、文字が単語になり文になる、題名を書いて一まとまりの文章になれば作文になるという一連の作業を、各自に合ったレベルで助け舟を出しながら丁寧に進めていきました。

無言で真剣に清書する子、「あっ、どうしよう。まちがったー」と明るく話をしながら進める子、書き終えて満足そうに微笑む子、完成してガッツポーズを決める子など、どの子も初めての長い作業でしたが、よく聞いてよく理解して頑張りました。

簡単な線しか描けなかった子がだんだん難しい形が描けるようになり、自由に絵を描いて楽しめるのと同じように、日本語の文字を覚え、言葉を増やし、文を自由に書けるようになることは楽しいことだと少しでも伝えられたらいいなと思っています。


*次から順次、生徒の作品をアップしていきます。



こどもの にほんご

nipponica イタリア・ボローニャ 幼児からの継承日本語クラス