触る美術館

                              (画像はWikipediaより)


ボローニャにあるIstituto dei Ciechi Francesco Cavazzaという盲学校に、Museo tattile Anterosという施設があります。

ここは、視覚障害のある人が、絵画表現を理解するための教育や鑑賞ができるように、有名な絵画を浅い浮き彫りにしたものを制作展示しています。

浮き彫りは、単純に絵画を浅く立体的にするのではなく、目の見えない人が触って奥行きがあることが理解できるように工夫されているものです。

それらの展示物や、浮き彫りの制作工程と視覚障害のある人への美術の理解のための教育理念や方法などを、専門家に説明してもらいながら見学してきました。

子ども達には解説は少し難しい内容でしたが、視覚を使わずに触覚で絵画を理解し感じる方法や伝える方法を教わって、実際にたくさんのレリーフを自由に試し、制作工程を見せていただき、最後に粘土で目を瞑って形を作り記憶を表現する体験もしました。

電気を消したうす暗い部屋で、目を瞑って指先の感覚だけを頼りに粘土を形作るのは、大人も子どもも難しいながらも楽しく、貴重な経験になりました。

また、教育法も体系的に考えられており、具象から抽象やデフォルメされたものへ、一部分から全体へ、正面、サイド、上からと立体をいろいろな方向から示し理解を深めることなどで、最終的に目の見えない人も遠近法を感じ取って理解し、目の見える専門の彫刻家が作った浮き彫りを正確に触覚で「模写」することができるまでを見学しました。

一見、継承語教育とは関係がないようですが、視覚と触覚の違い、それらを言語表現することなどを体験して、子どもたちの知識や世界が少しでも広がればと思いますし、イタリアの日常生活で日本語を見たり聞いたりする機会が限られている子ども達にどうやって日本語を伝えるかに心を砕いている保護者や私にとっても大変示唆に富んだ内容でした。

教室外での活動は初めてだったのですが、お天気も良く、いつもとはまた違った楽しさのある土曜日になりました。


日本の専門家の方が発表されたこの美術館の視察報告の文章がネット上にありましたので、ご興味のある方は参考になさってください。

https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-241/d-241_06_02.pdf


イタリア語のみですがwikipediaには写真がたくさんあります。








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