継承語について考えてしまう本

表題作は、アメリカで育つ少年と英語が満足に喋れない中国人の母親の物語です。

著者は中国系アメリカ人で,子どもの頃に親と一緒にアメリカへ移民した人のようですから、きっと自身の経験もあって、このようなストーリーを考えたのかもしれません。

中国から来た母とアメリカ人の父の間に生まれた少年は、成長するにつれ満足に英語が喋れない母親と距離を置くようになってしまい、病であっけなく亡くなった母の書き残した中国語の手紙を人に読んでもらって,母親と近かった子供の頃を思い出します。彼には読めない漢字を指でなぞるというシーンがあって、漢字を読み書きし、異国で母である自分を考えずにはいられませんでした。

サイゴン特派員だった著者は、子連れのベトナム人女性と再婚し、サイゴン陥落で家族は東京で暮らし始めます。日本語もベトナム語もフランス語も中途半端になりつつある養女の教育をどうするか、仕事で忙しい中父親として愛情あふれる筆致で様々なエピソードが語られます。

時代も少し古いですし、再婚、連れ子、戦争など特殊な事情もありますが、子どもの言語教育についてどうするのがいいのか、同じ立場の親として非常に考えさせられます。


こどもの にほんご

nipponica イタリア・ボローニャ 幼児からの継承日本語クラス